【価格改定しました!】
ミース・ファン・デル・ローエが設計したファンズワース邸にインスパイアされ、日本式(正倉院)にアレンジして建てられたというこの家。
逆瀬川の閑静な住宅地、レンガ造りの擁壁と小高い庭木の背後で宙に浮かぶように佇むその建物は、道行く人も振り返る稀有な存在感を放つ。
経年劣化で内装はリフォームされているものの、間取りなどのオリジナリティは十分伝わってくる。
「建物を壊さずにどなたか買って下さる方を探すことはできますか?」と恐る恐る尋ねるオーナー。それに対し、「大丈夫です」と即答する僕。
ご高齢となり、やむなく引っ越しすることになりましたが、長年暮らしたこの家を離れるのはやはり寂しいとのことで、せめてこの建物が残ってくれたら、との思いから今回の募集に至りました。
1階はいろんなハーブに覆われた庭と、建物下にアトリエ使いも可能な複数の倉庫。ウッドデッキが敷かれた建物下で、かつては知人とパーティーを頻繁に催していたとか。
建物を支えるド迫力のコンクリート柱を横目に階段を上ると、2階ワンフロアが平屋造の住居スペース。
間取りがユニークだ。建物の真ん中付近に玄関が設けられ、扉を開けるとLDKなのだが、南北に長い食器棚で緩やかに視線を遮る仕掛け。それを回り込むとLDKの空間が現れる。
天井は板張り、居室は東側寝室を除いて絨毯で統一され、南北に東西方向へ廊下がズドンと走る。その廊下の突き当たり、東西の端に寝室がそれぞれ設けられている。
そして、南面はすべて窓。内側には天井までの障子、外部には木製ルーバー雨戸が連なっている。北側廊下にはローキャビネットが連なり、その一部に洗面台を設けているのもユニーク。水廻りの設備はオリジナルから既に交換されています。
写真はありませんが、南側の雨戸をすべて開けると、眼下に一面ハーブの庭が広がります。椅子に腰掛けていても視界が広がる設計は魅力的。
脱衣場とトイレの天井は半透明の板が貼られている。そのおかげで、部屋内でも明るい印象。
逆瀬川沿いに散歩へ出かけ、家へ帰ると豊かなハーブの庭を愛でながら季節と共に暮らす。
撮影を終え、物件を離れる時ふと思った。この家の設計者は日々の暮らしの美しさをいかに建築へと落とし込むかを考えていたのかもしれない、と。
なぜなら、僕の頭の中にはこの家の何気ない風景がしっかり刻みこまれたからだ。 |