山際にひっそりと。 その風景に溶け込むように浮かぶ小さな古民家を見つけました。
兵庫区の山の裾野エリア、山王町。 この辺りに来ると空気が一気に変わるのは、すぐ側の山から下る川の水面を通って吹く冷たい風のせいだけだろうか。
石段を登りきると、凛とした佇まいの平屋が現れた。おそらく大正時代に建てられたと思われるが築年数は不詳。
玄関を開けまっすぐと、何もない台所だったらしき場所へと足を進める。辺りは薄暗く、なんだか近づきがたかったのを軋む板間のせいにした。
奥にある洋室は、激しい雨漏りに加え、床の隙間からうっすらと外の光が見え、天井は今にもはがれ落ちそうなほど脆く朽ちていた。
修繕する方が大変なんじゃないだろうかと落胆し伏せた顔を上げなおすと、暖かい日差しが入る南の窓へと向かった。
当時の趣が残る静かな廊下を通り縁側へ。 そこには時代を読み解くような建具やガラスが、美しいまま残っていた。
これらは一度壊してしまえば二度とは見られないもの。
増築された部分よりはるかに長い歳月を重ねてきたはずなのに、未だ優れた姿のままの和室二間を中心に、必要な水回りを整えてみてはどうだろう。
すべてを修復できなくてもいい。 あなたが残したいもの、守りたいものと暮らそう。 決して大きくはないけれど、一人暮らしや二人暮しの住居としては、十分な広さではないでしょうか。
そして、建物よりも遥かに広い土地面積。遺跡のような庭もぜひ生かしてほしい。大きな車は入れませんが、家の前に月極駐車場もあります。何かを貫き通す職人さんの住居兼アトリエにもうってつけかもしれません。
神戸の都市部からバスで20分ほどの場所。市場や商店街も徒歩圏内という利便性はもとより、自然にほど近いのが何よりの魅力。石井川上流を散策し、そのまま緩やかな山道を登ると烏原貯水池へ。森を歩けばまるで秘境にでも来たかのような景色に出会います。
正直、経年劣化による腐食や傷みが大きいため、屋根も含め補修費用はそれなりにかかりそうです。
ですが、自分にとって何が大切か取捨選択しながら生きたい!そう思わせてくれる家に出会ったような気がします。 |