2017.7.28
神戸市北区での暮らしはどうですか? – 農村編 -
神戸市北区の暮らしにスポットをあてるコラム、継続中。今回は神戸市北区で暮らしている方へ行ったインタビューを紹介します。
神戸の中心街・三宮まで車で約30分の神戸市北区淡河町(おうごちょう)。田畑のなかに昔ながらの古民家が点在している。
北区淡河町。ここには野菜や花を栽培する農家が多く、今でも茅葺き古民家が残るにもかかわらず神戸の中心街・三宮まで車で約30分というロケーションなので、“自然に囲まれた古民家に暮らしながら会社に通勤する”なんて生活も実現できる。
北区淡河町は農村地域だが、三宮から車で約30分の場所にある。(出典:google map)
「実際にそんな生活できるの?」という声が聞こえてきそうだが、それを実践しているのが小西さんだ。2017年2月に神戸市兵庫区から家族で引っ越してきた。 夫の小西慶太さんは北区淡河町の家から灘区の会社に通勤している。
明治築の古民家で暮らす小西さん一家。
ーー淡河町を選んだのにはどんな理由があったのでしょうか?
小西慶太さん(以下、慶太さん):もともと兵庫区・新開地の賃貸マンションに住んでいたのですが、子どもの環境のこともあり、引越しを検討したんです。田園風景が広がる場所がいいなという、ぼんやりしたイメージがありました。祖父のセカンドハウスが高知の四万十にあって、小さいときによく遊びに行っていたので、そういう場所に住みたいという気持ちが何となくあったのでしょう。
小西真衣さん(以下、真衣さん):私はもともと四国の田舎の出身で、都市部は建物が密集し空気もあまり良くないのが気になっていて。子どものためにも、のどかで空気のきれいな場所に移れたらいいなと考えていました。
慶太さん:学生時代に建築系の研究室にいたので、この明治築の古民家を見たときは興奮したのを覚えています。「明治築」そのフレーズだけで「いいね!」と(笑)。他にも古民家物件をいくつか見ましたが、明治時代の家に住みながら今の仕事ができるというのが決め手でした。資金的にやりくりできる範囲だったのも大きいですね。
真衣さん:私も曽祖父母の家がこういった感じの古民家だったので、懐かしい感じがしていいなと思いました。玄関を出てすぐが道路じゃないので子どもが自由に遊べるのも気に入りました。
ーーご親族の反応はどんな感じでしたか?
慶太さん:始めは心配されて、すんなり賛成してくれませんでした。でも、この物件に前住んでいた方やR不動産の方が私の親族にも会ってくれて、丁寧な説明で心配事をひとつひとつ解いてくださったことが大きかったです。
あと、淡河町は移住促進の取り組みに積極的で情報発信が充実していたので、淡河町のHPを見せて説明できたのも大きかったですね。今では、新開地に住んでいたときよりも多く遊びにきてくれるようになりましたよ(笑)。
慶太さんは灘区の会社に勤めるシステムエンジニア、真衣さんは専業主婦。
ーー農村地域への移住は、都市への引越しとは違い、地域やご近所との親密なコミュニケーションがより必要になってくるという声も聞きますが、その点についての心配はなかったでしょうか?
慶太さん:心配はありましたが、前に住んでいた方や、移住コーディネーターさんをはじめ、いろいろな方に相談できたのが良かったです。その方が自分たちと同様に移住組で、なおかつ同年代だったので安心感がありました。実際にこの地域から三宮まで通勤している人がいる等、住んでいる人にしかわからないことを聞けたのは本当に大きかったです。
ーー農村部が都市部よりも「付き合い」を大事にするということはよく言われるところですが、そういうイメージは引っ越す前から持てていましたか?
真衣さん:私の田舎でも、自治会の役割分担や隣近所に何かあれば手伝いに行く、といったつきあいがあったのでぼんやりと想像はできていました。
慶太さん:僕は持っていなかったですね。つながりが密になるとは思っていましたが、どういう感じか想像がつきませんでした。引っ越し後に自治会の集まりがあって、その時の顔合わせでやっと実感しましたね。
ーー地域の皆さんはどんな反応でしたか?
慶太さん:いきなり新顔が引っ越してきたので、まだ何となく怪しまれているのでは…と個人的にちょっと不安に思っています(笑)ただ、引っ越し直後に近隣の方が地域の方々との顔合わせをセッティングしてくださり、引っ越した経緯など2時間くらい会話させていただけました。自分たちからはこういう機会をつくることはなかなか難しいので、非常に有り難かったです。
また、先日は地域の夏祭りのカラオケ大会に飛び込み参加しました。これから徐々に地域に溶け込んでいくことができればと考えています。
現代の暮らしに合わせてリフォームされている室内。(リフォームは前オーナーによるもの)
ーー灘区の会社に出勤するのに、朝は何時に出られますか?
慶太さん:いつも7時50分に出ます。車で20分かけて神戸電鉄の五社駅に着き、そこから電車に乗って。会社に到着するのがちょうど9時くらい。自宅に帰ってくる時間は、残業による波もありますが、だいたい19時に会社を出るとして、21時までにはという感じです。
ーー奥さまはこれまでのところどのような感想ですか?
真衣さん:日々賑やかで、孤立感を覚えることもなく暮らせています。もともと田舎出身というのもありますが、ご近所の方の生活の気配もあるので特に“怖い”と感じることはないですね。
スーパーへも車で15分くらいですし、洋服も三田のアウトレットや近所の大型モールがあるので、不便は感じていません。三宮には行かなくなりました。
ーー三宮に行かなくなったのは興味深いです。行かなくても暮らしが完結できるということでしょうか?
慶太さん:そうですね、車があれば買い物も食事もまったく問題ありません。その気になればすぐ市街地に出られる安心感はあります。 また、わざわざ自然を楽しみに行く必要がなくなったので、そのために遠出することも少なくなりました。家の近くで十分楽しめるという感じです。
昔ながらの土間。暮らしやすいようにリビング等はリフォームしつつ、古民家ならではの趣を随所に残している。
ーー保育園・幼稚園や学校についてはどのようにお考えですか?
慶太さん:近所の幼稚園に通わせようかなと思っています。でも、このあたりの学校は1学年10人に満たないくらいと聞いて、びっくりしました。少人数だからと不安に思うことはないのですが、自分自身の経験がないので正直想像できないところもあります。
真衣さん:私が子どものときは1学年40名くらいの学校でしたが、少人数だとのびのび主体的になるのではと思っています。高校生くらいになってクラスの人数が増えたときに、もしかしたら大人数に萎縮して人付き合いに困る場面がでてくるかもしれないですが、親としてサポートしつつ、本人が自主的に乗り越えていってくれればと期待しています。
ーー「将来こんな暮らしがしてみたい」など、思い描いている生活イメージはありますか?
慶太さん:子どもが成長して独立したら、半分自給自足生活に挑戦してみたいですね。セカンドライフを楽しむためのステージとしてこの場所を最大限活かしていきたいです。
ーー農村の古民家から通勤していることについて、周囲の方の反応はどうですか?
慶太さん:10人中10人が「なんでそんな所に住んでるの!?」ってなります(笑)あえて明治築の古民家に住む、ということが理解されず、9割くらいの人は「自分だったら住まない」って言われますね。
古民家暮らしは、ご夫婦の価値観が同じだったから実現できた。
ーー実際に今日伺ってみて、とても素敵な暮らしだと感じましたが、都市部に仕事場を持ちながら田舎を生活地に選ぶというのは、まだまだメジャーな考え方ではないですよね。ご夫婦で価値観が一緒だったということでしょうか?
慶太さん:そうですね、夫婦で淡河町の古民家暮らしが良いと思えたのは大きかったですね。もし、どちらかが都会で暮らしたいと思っていたら、たぶん別の場所に引っ越していたと思います。
ーー今日はありがとうございました。
インタビューの中にもあったように、移住促進に積極的に取り組んでいる淡河町。最近では、「淡河本陣跡」と呼ばれる江戸時代から残る建物を改修し、カフェや宿泊施設の運営を計画するなど、若い世代を含む地域住民の活動が目立っている。
そのため、小西さんのように移住を検討している方をフォローする体制が整いつつあることも、街に移住者が増えている理由のひとつかもしれない。
山と海に囲まれた街、神戸に移り住み5年。引越魔だった私が神戸に定住できたのは、この街の居心地がとても良いから。 そして神戸で会社を始めたのも、この街に住み続けられる仕事というのが大前提にあったから。居心地のわけをお伝えして参ります。
小泉寛明(神戸R不動産/Lusie Inc.)
小泉亜由美(神戸R不動産/Lusie Inc.)
西村周治(神戸R不動産/Lusie Inc.)
岩崎大輔(神戸R不動産/Lusie Inc.)