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2015.9.10

 
僕が31歳で二拠点居住を始めたワケ(最終回)
岩﨑大輔(神戸R不動産/Lusie Inc.)
 

兵庫と京都の県境に位置する「夜久野町」(京都府・福知山市)。神戸R不動産のメンバー・岩崎は西宮市・甲陽園と夜久野町の二拠点生活を楽しんでいる。その模様を綴った連載の、いよいよ最終回。

出典:google map

第3回のコラムはこちらから

“もうひとつの家”夜久野町の生活

前回に引き続いて、夜久野での生活について紹介する。近所には温泉施設と地元農産物などの直売所がある。車で5分もあれば温泉に行けるのだが、好きな人にとってはたまらないと思う。農産物は質の高いエリアなので、見ているだけでも楽しい。

「但馬牛」がリーズナブルに食べられるお店が点在しているのも本場ならではだ。他にも、後味あっさりのダイエットジェラートが有名な「ライラック」、ワールドチョコレートマスターズ2007で優勝経験もある「洋菓子マウンテン」の創作スウィーツなど、失礼ながら予想外のお店のクオリティーの高さに驚いてしまった。

遊びに行く場所にも意外と退屈しない。
スケール感のある山なりの地形に、場所によって植生の種類が大きく異なる「但馬高原植物園」。夜久野の地元民の憩いの場・天空の城「竹田城跡」などが車で30分ほどの距離にある。

夜久野ではしばしば大雪に見舞われる。

また、夜久野を拠点に、いろんな場所へアクセスできる。たとえば豊岡市の「城崎温泉」。車で約1時間で行ける。城崎は2014年に誕生した「城崎国際アートセンター」で国際的な注目も集めている。国内外から個性的なクリエイターが集まり、地元民を巻き込んだパフォーマンスやワークショップの風景を日常的に目撃することができる。
他に、京都府の舞鶴、久美浜など風光明媚な海の町にも日帰りでアクセスできる。こちらは車もいいが、電車もおすすめだ。ルートや電車そのものがユニーク。

城崎で出会ったイベントの数々。(左)「城崎温泉ダンス旅」の一幕。観光客がコウノトリの被り物で即興ダンス中。(中)平田オリザ氏による演劇ワークショップ。(右)外国人アーティストによるシュールなパフォーマンス。

夜久野は内陸の盆地なので、夏は暑く冬は寒い。かなりの雪が降り積もることもあるので、気候的には少々住みにくい。真冬は行けない時期もある。
しかし、そんなことを差し引いても満足していた。

住み始めた当時はまだ会社勤めをしていたので、休日や連休を中心に訪れるのが精一杯だったが、それでも「実際に住む」というのは、旅行として訪れるよりも体験できることの質がはるかに違った。

(左)夜久野では床で遊ぶ、寝るを満喫。(右)暖炉の火は眺めるだけでもいい。

甲陽園のマンション暮らしでは得られない

夏のある日。スイカ、キュウリ、ちっちゃいトマトたちをいただいちゃいました。

そして、隣り近所が助け合うことの常識レベルが、僕らの感覚と明らかに違う。不在時にちょっと庭の草を刈ってくれていたり、久しぶりに行くと車や物音の気配でわかるのか、ひょこっとウチにやって来て、必ずと言っていいほど挨拶代わりに大量の季節野菜などを置いていってくれる。
僕は田畑をやっていないが、農産物はいただく機会が多いので正直あまり困ったことがない。
逆に僕らも、料理したものや都会のお菓子などをお土産に持っていったりする。これが連鎖的になってコミュニティーが生まれ、助け合うことの常識へとつながっている気がしている。

子どもにとって、農村は格好の遊び場である。甲陽園のマンション暮らしではさすがにできないブランコ遊びも、ここでは思う存分楽しめる。ロープと余っていた木で造った簡易なものだが、公園で譲り合うストレスがないので、それが嬉しそうだ。

甲陽園ものどかだが、夜久野町は周囲を都会に囲まれていないので植生や虫の生態はやはり違う。農道を抜け川原までの散歩道でも、いちいち立ち止まって興味津々だ。ふき、たらの芽、つくし、ワラビ、ワケギなどの山菜や野草も自生している。春は天ぷらや佃煮などにしていただくことも多い。

ヘビもしょっちゅう出てくるし、たぬきや鹿なんかもいる。熊が出たときはさすがに大騒動だったが、それでも村の人たちはどことなく平気な様子だった。

庭にハーブを植えているのだが、一度植えたらひっきりなしに生えてくる。収穫したハーブを日干しし、新鮮なうちにハーブティーにして飲むと、市販で買うものと比べ味の鮮度が格段に良い。

フレキシブルに、二拠点居住

全国的にも珍しい奇祭として知られている夜久野町の秋の祭り「額田のダシ祭り」。野菜や果物など農作物を使い伝説の生き物などを再現したつくりものが有名。

日常生活が2つあることによって、逃げ場ができたような気がする。例えば僕の場合、甲陽園で生活する中で仕事に煮詰まってきたら、少しの時間があるなと思えば夜久野に向かい、一日だけ過ごしたりする。一見時間のムダに思えるが、精神的な部分ではずいぶんと救われる。「残りの仕事を仕上げるためだけに夜久野にいた」なんてこともたまにあるが、休憩の合間にウッドデッキで風景を見ながら過ごしたり、少しの隙に温泉へ出かけるだけでずいぶん非日常感を味わい、旅行に行った気分にもなる。

子どもについてはまだ小さいのではっきりわからないが、自分の子どもの頃を思い返せば、何も知らない幼少期に体験した出来事は、成人してからのそれよりも一つ一つを鮮明に覚えていると思う。その意味では、本人次第ではあるがいろんな体験の場があるというのは有意義なのではないだろうか。
既に2つの家で体験できることを分けて考え、「夜久野に行きたい」などと言うようにはなってきている。

一見すると二拠点居住は特に費用面で難しいことのように思えるが、最初から2つの家を前提に組み立てをしていけば意外とできるものだ。その方法は人によって異なるが、たとえば居住地の一方をたとえば甲陽園など阪神間(神戸エリア)に据えてやると、もう一つの拠点は選択肢がとても増える。僕はもうひとつの拠点をたまたま内陸の但馬方面にしたが、神戸周辺にはまったく違う個性をもった土地柄がまだまだたくさんある。淡路島のような島もあるし四国に渡ることだって十分可能だ。

自分の価値観をどんどん変えていく意味でも、もっと気軽に、若いうちに、いろんな住処をフレキシブルに経験してほしいなと思います。

雲海に包まれる夜久野の夕景。

(おわり)

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このブログについて
 

山と海に囲まれた街、神戸に移り住み5年。引越魔だった私が神戸に定住できたのは、この街の居心地がとても良いから。 そして神戸で会社を始めたのも、この街に住み続けられる仕事というのが大前提にあったから。居心地のわけをお伝えして参ります。


著者紹介
 

小泉寛明(神戸R不動産/Lusie Inc.)
小泉亜由美(神戸R不動産/Lusie Inc.)
西村周治(神戸R不動産/Lusie Inc.)
岩崎大輔(神戸R不動産/Lusie Inc.)

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