2012.3.28
ポスト震災 DUALオフィスのススメ
少し気難しい感じですが、今月のコラムは企業立地について最近考えていることを綴りたいと思います。企業の立地に関する研究は色々あります。交通網といったインフラの集積があるか、取引先との距離と利便性が高いか、気に入った地域かどうか、人の集積によって情報が入りやすい場所かどうか、優秀な従業員がいそうな場所か、ランチタイムは楽しそうな場所か、などなど。集積が集積を生むという考えのもと日本の都市は成長してきました。
神戸のビジネス中心部。東京のみならず、ビジネスは集まって仕事をすることにより効率化してきました。
すべてが経済成長をしていた時代は「成長」という一つの目標に向かって、みんな進むことができました。しかしバブル崩壊が経済のトーンダウンのきっかけだったと思います。その後も「東京という日本のビジネスの中心地でしかビジネスは育たない」そういった流れを追いかけて、東京に人、物、金が集中を続けてきました。でもリーマンショック以降、行き過ぎた金融技術や情報を駆使したビジネスモデルは破綻を続けました。そんな今になっても、昨今の一部の商品は理由をこじつけて無理矢理「売る」ことを前提としたPR偏重型の商品が見受けられるような気がします。もちろんすべての新商品を否定するわけではないですが、本当に必要な商品の根本である、中身のレベルを高めた商品が少なくなってきており、昔のように新商品に魅力を感じなくなっているのは私だけではないと思います。
今こそ売る商品そのものの本質を追求するという企業戦略が求められているような気がします。マスコミを中心に情報を売ることが主体のビジネスは別として、ものづくりなど商品そのものの魅力開発が生死を分ける企業は地方に移動するメリットが多々あるのではないでしょうか。金融機関との取引は地方でも十分同様のサービスが受けられます。震災の心配は日本全国どこでも同じですが、東京圏はビジネスの営業拠点としては外せない場所であることは確かです。しかし商品企画や本社業務の一部を地方都市に移すことも考えられないことではありません。地方なら家賃、人件費も生活コストが安い分、大幅に安く収まるかもしれません。その削減分を、本来力を入れるべき商品力の向上に注げます。もちろん東京の拠点は外せないですが、東京で万が一のことがあったとしても社員や家族を移動させれば会社は生き残れます。
神戸では港湾地域を支えた物流業が衰退しつつあります。かつてカルチャーの中心地だった三宮高架下も空き店舗が多い。
地方には、集約による麻薬的でカオス的な魅力はありませんし、ビジネス拠点としては東京とは比べ物にならないほど冷えきっています。ただ、生活を中心とした暮らしが可能です。「成長を前提」としないこれからの20年、30年先を見据えた、地に足のついた生活もビジネスも確立できるのではないでしょうか?
企業の移転は計り知れないぐらい地方の経済にインパクトをもたらします。地方から東京に打ち合わせに行って東京のホテルや飲食店にお金が落ちていたのが、逆の動きになれば、地方の血のめぐりが変わります。企業や人に移動なしには地方は元気にならないと思います。地方には、その昔に活躍したインフラや建物が残っています。そのインフラや建物の有効活用するのも一つの選択肢ではないでしょうか?
その昔に活躍した建物たち。再利用されるのを待っているようです。
私は神戸がその拠点として面白いと思って、神戸に根ざして仕事をしています。では神戸が必ずしも安全かというと、今の時代はどこにいても安全とは言い切れないですが、拠点は二つあった方がリスクは分散されるでしょう。もちろんすぐ実行できる話ではないです。少しずつ新たな拠点で試しながら、本当に良ければ移動するというのが現実的でしょう。神戸の街は一度住み始めるとなかなか出たくなくなる街です。私もあるきっかけで住み始めましたが、結局はそこにビジネスを構えて、住んでしまうという結果に至りました。ちょっとしたきっかけをつくって頂き神戸に拠点をつくってみるという選択をオススメします。
山と海に囲まれた街、神戸に移り住み5年。引越魔だった私が神戸に定住できたのは、この街の居心地がとても良いから。 そして神戸で会社を始めたのも、この街に住み続けられる仕事というのが大前提にあったから。居心地のわけをお伝えして参ります。
小泉寛明(神戸R不動産/Lusie Inc.)
小泉亜由美(神戸R不動産/Lusie Inc.)
西村周治(神戸R不動産/Lusie Inc.)
岩崎大輔(神戸R不動産/Lusie Inc.)