まるでSFの世界だ。湾岸部にそびえ建つ70年代テクノロジーを結集したロボティクスな建築群。
なぜだろう、今でも未来を感じさせる。40年経っても色褪せない、いやその魅力は増している気さえする。時代は高度経済成長期、あの頃の日本は未来に希望を感じ挑戦的だった。まさに時代を象徴する建築。
しかも今回ご紹介する物件は、団地内でも海側の水辺に囲まれた特等席。なんてったってまずこの眺望。バルコニーからオーシャンビュー。 16階とだけあって、ダイニングチェアに腰掛けると窓一面に大空と海。洋室2部屋からだって、水辺の開けた景色が望めます。
インテリアコーディネーターのオーナー自ら企画し約20年前に改修。決して造り込まれていないのに洗練された雰囲気を醸し出すのはさすが。 LDKや廊下はナラ材の幅広の無垢床に吹き付けの壁。洋室2部屋は元々和室で、畳の上にカーペットが敷かれています。希少な建築当時のレトロなドアノブも残されていてgood。
部屋の主役となるのが、シンプルながらモダンでインテリアの一部として馴染むポーゲンポールのキッチン(世界でも最高級と認められているドイツのメーカー)。孫の代まで伝承できるモノづくりを掲げるブランドだけあって、時代を超越したデザインにしっかりとした上質な造り。収納力はもちろん使い勝手も良さそうで、人工大理石の天板でピザやパン作りにも最適。
ここで海を眺めながら料理なんて最高だな。料理好きの方にはきっと気に入っていただけるはず。玄関一面に設けられた収納ユニットもポーゲンポール社製で統一されています。
一部カーペットやクロスなどに汚れや傷みが見られる箇所もあるので、多少のリフォームは必要。でも20年前の改修と思えないくらい綺麗に使われています。
日本の住宅を近代化しよう!と工業化一直線の先端に生まれた団地。当時の渾身の先端技術が投入されています。
突筆すべきは地域暖房給湯システム。各住戸には個別の給湯器はなく、敷地内にある巨大ボイラーで熱を生成し、お湯や温風が届けられます。また、近くの焼却施設まで自動的にゴミを運んでくれる真空のダストシュートが備わっていて、ゴミ袋片手に1階まで降りなくてもゴミを24時間投入できます。
緑や水辺に囲まれた自然豊かなロケーション。公園を囲うように各住戸棟が建てられていて、かなり緑豊か。取材に訪れた日は桜が満開で、敷地内でお花見をしている人も多く見かけました。徒歩1分で水辺へ。砂浜ビーチも近くてランニングや散歩にも絶好です。
ランドスケープも住戸配置も無機質な外観とは相反して有機的。巨大団地という一見合理性を求められる集合住宅でありながら、自然に囲まれた環境で人間らしい豊かな生活が送れそう。
芦屋浜って正直遠いイメージがあったんです。でも実は阪神芦屋駅からバスでたったの4分。JR、阪神、阪急各路線の駅にアクセスできて、バスも頻繁に出ています。
団地内にはスーパーや郵便局、銀行などの施設も充実。団地周辺には小中学校、高校まで揃っていて、まさにコンパクトシティ。図書館や美術館も近いし、子育て世代やシニア世代にも住み良い環境。街中に出なくたって、水辺を散歩して図書館で借りた本を公園で読書する。それだけで充実した休日を過ごせそうだ。
今なお未来を感じさせるあの頃思い描いた近未来住宅。決して現実主義の現代では実現し得ないはず。先行きの見えない世の中だからこそ、未来を感じさせる建築に惹かれるのかもしれない。
ここが楽園のように感じたのはきっと僕だけではないはず。 |